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日本に二大政党制は根付かない
(毎日新聞「発言」 2014年7月31日)

 二〇一二年十二月の総選挙によって日本の政党政治が「一強多弱」に移行してからおよそ一年半。「多弱」の再編がこの夏から秋にかけて進むとみられている。今後の野党再編について考えるさい、留意すべき点をいくつか挙げてみたい。

 第一に、再編によって成立する「政党」は「徒党」であってはならない。政治学では政党を「主義主張を同じくする者の作る政治結社」と考える。ならば、意見が違う者が政権欲しさに寄せ集まったものは「徒党」にすぎず、本来「政党」と呼ぶべきではない。

 たしかに政治の世界では、大同を小異に優先させる考え方も時に必要となるだろう。だが、かといって憲法論や安全保障論などで根本的に意見を異にする人たちが「現政権の打倒」だけを旗印に集まっただけでは、結局、政権を獲得しても長続きはしない。政治戦略としては、そうした「ご都合主義」も主義主張に含めてもよいのかもしれないが、それは決して政党政治の健全な姿とは言えない。ゆえに、新たに発足する政党には、一貫した政治哲学に基づく結社であることを、そして既存の政党とはどこが違うのかを、明瞭に国民に示してもらいたい。

 第二に、国民は、れっきとした政党であるならば、「多弱」の存在をしばらくは受け入れるべきだろう。政党の乱立を批判し、二大政党による政権交代政治を理想とする言説は依然として多い。最近はそれが「多弱」の大同団結を求める声となって表出している。しかし、一九九三年と二〇〇九年の事例を振り返って見ても、政権交代だけを目的とした「野合」では、ほどなく再分裂して終わってしまう。ならば、国民は政党らしい政党がいくつかしっかりと成長してくるのを待つしかないではないか。

 そもそも二大政党による「二者択一の政治」は、AがダメだからBにするといった消極的選択をうながす。政治理念や政策に共感して政党を選ぶのを理想とすれば、ほどほどの多党制のほうが有権者に適切な選択肢を提供できるのだ。やはり一定規模の「第二極」に加え、「第三極」も少しはあってほしいではないか。

 今後の日本の政党政治では、与党のほか、極端な保守政党と極端な革新政党が一定の支持を集めるにちがいない。問題は「旧第二極=民主党」と「旧第三極=維新・みんな」の再編だ。いかなる理念を掲げて個性を発揮し、野党再編をうながしていくのか。民主党はこの際、党を割っても、長年の課題である一体感の欠如に終止符を打つべきだろう。

 最後に、政党の再編が選挙制度改革と密接にリンクしていることも忘れないようにしたい。AかBかの選択を迫ることで二大政党制をもたらしやすい小選挙区制を拡大すべきか。小選挙区制中心の選挙制度であるにもかかわらず多党制になっている現状を踏まえ、むしろ多党制を前提としつつ、ミニ政党が乱立しない仕組みにするほうがよいのか。

 「政党らしい政党」が成長できる政治風土づくりには、中規模政党の存続容認は不可欠だ。野党は再編を進めながら、同時に自らの存続と成長を可能にする選挙制度改革についてもきちんと提言すべきだろう。