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「政治演説・鑑賞マニュアル」
第1回 政治演説に酔ってみる?
(2013年7月 gooニュース 参院選・特別コラム )

 参議院選挙が公示されました。外出時に政治家が演説している場に出くわすことも増えてきます。これまで政治家の演説を真剣に聞いたことがないという方も,せっかくの機会ですから,一度,じっくり演説を聴いてみてください。きっと,意外な発見があると思います。なにしろ,政治家は人の心をつかむ術(人心収攬術)の達人ですから。

 実際,上手な政治演説を聞いていると気分が高揚してきます。オバマ大統領の演説なんか,その典型ですよね。2008年の最初の大統領選挙の時は,会場にいたみんなが「yes, we can」を叫びながら大いに盛り上がっていました。聞いていた人たちが演説に酔いしれて,とても前向きな気分になった証拠だと思います。

 「政治演説=政策の説明」ではありません。もちろん政策の説明も必要ですが,政治演説の狙いは,講義のような一方的な知識の伝達ではないんです。もし真剣に各党の政策を比べてみたいのなら,マニフェストのような公約をまとめたパンフレットを読んだり,政党のホームページを見た方がよいと思います。

 政治演説の最終目的は,聞いている人に「投票」という政治行動をうながすことです。ですから,政治家は自分の考えに「共鳴」してもらえるよう,聞き手の「頭」に対してだけでなく,「心」にも訴えかける必要があります。つまり,淡々と政策を説明するだけでは不十分なわけで,「感情の動員」が政治演説には不可欠なんです。

 商品を買ってもらうことを意図したテレビコマーシャルだって,商品の説明ばかりしているわけではありません。商品のイメージづくりにも力を入れてますし,見ている人の感情にも積極的に働きかけてきます。

 政治家の演説だって同じです。心をくすぐるフレーズやしぐさを使って,聞いている人たちを「そうだ!そうだ!」みたいな気持ちにしようとします。なんとか投票所に行ってもらおうと,かれらは知恵を絞り,言葉に工夫を凝らすんです。

 ということで,政治演説の鑑賞ポイントその1は,まず「聞き手を酔わせようとしているか」です。聞いていて「あぁ,この政治家と一緒に世の中を良くしていきたい!」って本気で思わせてくれたら,満点です。内容の善し悪しはともかく,マニフェストをただ音読するように政策の説明ばかりしている候補者は,大いに減点しちゃいましょう。そういう候補者は,いくら政策に詳しい専門家であっても,有権者の心をちゃんとつかもうとしていません。ですから,「政治家としての基本姿勢がなってないなぁ」などと評価してもよいと思います。

 そもそも「政治」というのは,普通にやっていたのでは解決できない問題をちょっと無理しても打開する技術です。無理をする以上,ムキになって反発する人も出てきます。それを乗り越えて前に進むためには,熱心に応援してくれる味方がたくさん必要になります。つまり,政治家は声援を得ながら,「こっちの方向にみんなで進むぞ!」みたいなムードがつくれないと,ダメなんです。

 時代を動かした大政治家は,民主的なケネディにしても独裁的なヒトラーにしても,政治演説がとても上手でした。日本にはそのレベルの演説巧者は少ないかもしれませんが,それでも,明治時代から今にいたるまで,政治家を目指して「雄弁」や「弁論」の術を磨いている学生たちはいるんです。じっさい,「うまいこと言うなぁ」と感心させられる政治家なら,あちこちにいますよ。

 政治家が演説しているの見つけたら,ぜひ足を止めて話を聞いてみましょう。聞き惚れてしまうような演説をしている人がいたら,一票を投じる事を真剣に考えてみてもよいかもしれませんね。

 ☆政治演説・鑑賞マニュアル今日のポイント

 (1)淡々と政策の説明ばかりするような演説は,ダメ演説です。

 (2)感情をかき立てる言葉のテクニックを政治演説から学びましょう。

 (3)聞き手を酔わせる演説ができる政治家にはきっと政治的才能があります。