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「政治演説・鑑賞マニュアル」
第4回 なさけない政治演説
(2013年7月 gooニュース 参院選・特別コラム )

 

 政治演説には,残念ながら,退屈なものもあります。話している政治家に幻滅するだけの演説もあります。今回は,定番だけどもつまらない,そういう演説パターンを紹介したいと思います。

 まず,若い候補者(とはいっても,40代だったりしますが)を見つけたら立ち止まって演説を聴いてみましょう。きっと,「わたくしの若い情熱で?」みたいな,きわめて陳腐で内容のないフレーズをさんざん聞かされるはずです。

 政治演説で,候補者たちは,政党で共通化している政策よりも,むしろ自分の個人的特徴をアピールしています。就活と同じで,まさに「自己アピール」するんです。強い政党に属していれば,それだけを強調していればよさそうですが,候補者はどうもそうは思っていないようです。名前を書いて投票する制度のためなのか,政党や政策よりも「自分を選んでほしい」という自意識が過剰になっているのかもしれません。

 いずれにしても,多くの候補者は,履歴書に書くような自分の「属性」,つまり年齢,性別,出身地,学歴,職歴,趣味・特技などを,あたかも「それで選んでほしい」と言わんばかりに,熱心に語ります。でも,「長年○○をしてきた経験を生かし?」というときの○○に「サラリーマン」や「主婦」や「スポーツ」が入ると,それが政治家選びの重要な基準なのか,ちょっと疑問に思ったりしますよね。

 まだ納得できるものもあります。若い候補者は必ずと言っていいほど「若さ」や年齢を強調します。女性の候補者は「女性の目線」を主張します。悪いことではありません。たしかに日本の政界では「高齢の男性」が目立ちますから,こうした定番フレーズも仕方ないのです。でも,演説でそればかり強調されると,やはり気になります。

 近年,「チルドレン」や「ガールズ」が,大政治家たちの政争の具として使い捨てられることがありました。ちゃんと国政を担っていける人材なのか。年齢・性別などの「属性」よりも政治家としての「資質」を見抜くつもりで,演説をじっくり聞くようにしたいものです。

 政治はたしかに敵・味方に分かれてのバトルなのですから,政治演説で「だれが敵で,だれが味方か」を明らかにすることは大事です。その際の定番フレーズもあります。「○○の味方」,「○○の目線」,「○○本位の」,「○○の側に立って」といった言い回しです。なお,この○○には,自分が味方と考える「庶民」,「市民」,「国民」,「生活者」,「消費者」などといった言葉が入ります。官僚や大金持ちという単語を入れないところをみると,おそらく想定されている「敵」は政財界のエリートなのでしょう。でも,かれらは「国民の敵」なのでしょうか?

 政治演説では「味方」を語る人はたくさんいます。でも,はっきり「敵」を示す人は多くはありません。「敵」を名指ししたところで,敵視した人をそう簡単には排除できないからです。かれらも日本を支える国民の一部なんですから。

 リアリティがないために,政治演説で示唆される「敵・味方」は,口先だけの定番フレーズになりがちです。一方,真剣に応援してみたくなる政治演説には,中途半端なバトルのドラマではなく,抵抗を乗り越えて目的を達成しようというヒーロー・ヒロインのドラマが盛り込まれています。たんに嫌なヤツをやっつけるのではなく,難関を突破して夢を実現させたい,といった前向きな内容をもっているんです。

 どうせ政治演説を聞くのであれば,前向きなほうがいいですね。応援のしがいもあります。あまりにも定番の「悪人たたき」ばかり繰り返す人は,この際,政治的技量が低いと評価するようにしましょう。もちろん,そうした演説も,週刊誌と同じで,まったく楽しみがないとは言いませんが。

 ☆政治演説・鑑賞マニュアル今日のポイント

 (1)若さばかりを強調する候補者は,政治演説の技量が未熟です。

 (2)政治演説では,候補者の属性よりも資質を重視しましょう。

 (3)口先だけで敵・味方を語る候補者よりも,抵抗を乗り越えて目的を達成しようと語る候補者のほうが,きっと政治的才能があります。