高瀬淳一 公式HP

Home> 情報政治論・言葉政治論>基礎知識

「政治演説・鑑賞マニュアル」
第5回 政策については何を聞く?
(2013年7月 gooニュース 参院選・特別コラム )

 当然のことながら,政治演説では「政策」も語られます。ただ,すでに述べたように,演説上手は,政策を細かく説明するよりも,聞き手である有権者との心の交流を重視しますから,あまり詳しく政策を語ることはありません。それに,前回見たように,候補者だって,政党が掲げる政策だけでなく,個人の魅力をアピールしたいんです。

 政策を語りながら有権者との結びつきを深めるには,聞く人に身近な政策を取り上げるのが無難です。シリアの内戦の解決は,たくさんの死者が出ている以上,国際社会が関心をもつべき重大な政治的テーマだと思いますが,日本の国政選挙の演説内容にはおそらくふさわしくないでしょう。普通,政治家は,農業従事者の多い地域では農業について,30代夫婦が多く住む地域では子育て支援や教育についてなど,聞き手に身近な政策を選んで語ります。聴衆を見回して「今日はお年寄りが多いなぁ」と感じたときは,さっとネタを年金に切り替えるぐらいの芸がないと,演説上手とは言えません。

 ですから,もし同じ政治家を違う地域で見かけたときは,演説の内容に違いがあるかチェックしてみましょう。地域特性を踏まえて演説内容を工夫していたなら,合格点です。

 また,身近な政策を取り上げ,「自分が当選したら,こうします!」と叫んでいる人がいたら,よく注意して話を聞いてみましょう。話の内容に候補者の「品の良さ」がにじみ出るからです。

 実際,「自分が当選したら,各世帯に2万円の支援を出します!」みたいな話は,意図が見え見えで下品ですよね。実質的に,有権者の一票を金で買うような話ですから。というか,「有権者なんて見返り目当てに投票するものだ」などと考えているのなら,失礼千万です。「バラマキ政策」も政策ですが,演説でこればかりチラつかせる政治家は,低く評価してもかまわないと思います。

 一方,「信念の人」の中には,相手かまわず,持論の「改憲」や「改憲反対」をひたむきに語る人がいます。それをいけないとは言いません。むしろ,そういう大きな問題について哲学的に語れるくらいの知的レベルが,政治家には必要だと思います。とはいえ,演説で心をつかむには,多少なりとも演説の場や聴衆を意識しなければいけないはずです。一方的に自分の話したいことを話す,という政治家は自己中というかプライドが高すぎるように思います。

 つまり,有権者を低俗と思っているバラマキ演説も,自分の信念をただ押しつけるプライド演説も,どちらも洗練された政策演説とは呼べないのです。政治家が政策を語り出したら,ほどほどの品格で,つまり有権者にこびることも,自己満足に陥ることもなく,行政の現状を踏まえてきちんと語っているか,チェックしてみましょう。これが今回の鑑賞ポイントです。

 さて,これまで政治演説の鑑賞ポイントをいくつか挙げてみました。あくまでもわたしの鑑賞のしかたです。ほかにもいろいろな見方があると思います。ぜひ,ご自身の基準をもって,政治演説を評価してみてください。そして,一緒に政治演説を楽しみながら,有能な政治家を選ぶ目を養っていきましょう!

☆政治演説・鑑賞マニュアル今日のポイント

 (1)聴衆を見ながら取り上げる政策を変える人は,政治演説が上手です。

 (2)政策の名の下に金銭的メリットを示唆する人がいたら,政治家としての品位を疑いましょう。

 (3)バラマキ演説でもプライド演説でもない分析的な政策論を場に応じてきちんと語れる人は,きっと政治的才能があります。