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鳩山由起夫元首相の言葉力

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首相退任後 2011年2月17日

「方便」という言葉は,愚かな民に教えを諭すのに必要な便宜を表す宗教用語である。だが,最近では,民が愚かな政治家を見極めるための言葉としても使えるようだ。

鳩山由紀夫前首相の2月12日の「方便」発言は,沖縄の地元紙の記者のインタビューに答えてのものだった。その内容は,首相時代の米軍普天間飛行場の辺野古移設決定を振り返り,その理由に「米海兵隊の抑止力」を挙げたのは「方便」だったと述べた,というものである。

私は政治と言葉を研究する者として,まずこうした報道をされるような発言をしてしまうことに,鳩山氏の政治家としての資質のなさを感じる。メディアにどう取り上げられるのかを考えて,発言するのは政治家のいわばイロハである。そこを意識できないのであれば,現代の政治家は失格である。しかも,話題は自分の政権の命取りにもなった沖縄の米軍基地である。アメリカ政府からの反応にだって配慮すべきだ。これだけ慎重を要する分野で気楽に放言してしまうのは,政治家失格である以前に社会人失格だろう。

この発言の弁明会見で,鳩山氏は,「記者から,それは方便として? と言われたから,そういうふうに言われたら,そういう部分があったかもしれない、と言った」と説明したらしい。弁明になっていない。記者のせいにして逃げようとしているのもダメだ。

第一,そうした確認をされるような危うい発言をしたことを認めてしまっている。

第二,「嘘も方便」という俗言がある以上,「方便」であったことを「部分」的にでも認めれば,「ウソをついた」と解釈されても仕方ない,ということに気づいていない。

「真意が必ずしも伝わっていない」とも言ったようだが,少なくとも「真意を伝える能力のなさ」は,(今さらながらだが)よくわかった。

もし,この方便発言がじつは菅政権打倒のための方便だった,などという話ならば,私もちょっとは鳩山氏の政治力を認めてもよいが・・・。