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菅直人元首相の言葉力

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大災害時の首相の言葉 2011年3月13日

 大災害が起きたとき、首相はどのようなメッセージを出すべきなのだろうか。菅首相の12日夜の発言を聞いていて、緊急のこととはいえ、ずいぶん落胆した。冒頭はこんな感じだ。

 「地震が発生して1日半が経過をいたしました。被災をされた皆さんに心からお見舞いを申し上げますとともに、救援救出にあたって全力を挙げていただいている自衛隊、警察、消防、海上保安庁、そして各自治体、関係各位の本当に身を惜しまない努力に心から感謝を申し上げます。」

 最初に、公務員に感謝の言葉を述べる必要はない。しかも、お見舞い「とともに」ではなく、せめて二文に分けて、被災者へのお見舞いは1文でしっかり述べるべきだ。これでは、お見舞いと並列、あるいはそれ以上に、公務員たちへの感謝を述べたがっているように見える。

 途中、いかにも官僚が書いた言い回しが続く。「~しているところであります」などというのは、被災地でテレビを見ている老若男女に伝わりやすいように「~しています」と普通に言えばよい。

 締めくくりの言葉は以下のようなものだった。

 「どうか、国民の皆さんに、この本当に未曾有の国難ともいうべき今回の地震、これを国民の皆さんの一人ひとりの力で、そして、それに支えられた政府や関係機関の全力挙げる努力によって、しっかりと乗り越えて、そして未来の日本の、本当にあのときの苦難を乗り越えて、こうした日本が生まれたんだといえるよう な、そういう取り組みをそれぞれの立場で頑張っていただきたい。私も、全身全霊、まさに命がけでこの仕事に取りくむことをお約束をして私からの国民の皆様へのお願いとさせていただきます。どうかよろしくお願いを申し上げます」

 「一人ひとりが、それぞれの立場でがんばれ、わたしもがんばる」というのは、内容としては正しいのかもしれない。しかし、国の最高指導者はこういうときこそ、国民心理の結束を図るべき、軸となるべき存在なのだ。「一緒に」「力を併せて」といった表現をなぜ使わないのか。「みんながんばろう!」となぜ叫ばないのか。苦しい立場にある人に向けて、「必ず助けに行くから」などと、感情を込めて語りかければよいではないか。

 自分の「全身全霊」で取り組む姿勢を示し、あとは「お約束」して「お願い」して、話を終える。それで首相の言葉として十分だと思っているとすれば、この政治家は官僚程度の言葉力しかないことになる。危機のさいこそ、政治家は国民の「情」の動員を図るために言葉の政治力を発揮すべきなのだ。せめて首相の演説くらい、政治主導にできないものか。