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政治家の失言いろいろ

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松本龍・復興大臣 2011年7月

 菅内閣の閣僚が,また一人,失言で辞任した。震災復興という最重要課題を担当していた松本龍大臣である。就任して一週間での早期辞任だった。

 特に問題となった発言は、岩手県知事との会談における「(知恵を)出さないやつは助けない」という一言だった。被災地に赴いて、前提条件付きにせよ「助けない」というフレーズをためらいなく使った以上、震災復興大臣としては資質を欠くと評価せざるをえないだろう。

 しかし、この大臣の「不適切」はそれだけではない。パフォーマンスもコミュニケーションも、不思議なくらいチグハグなのだ。わたしは、政治家の世論向けパフォーマンスやメディア対策、そしてなによりも「言語政治力」を研究してきたが、ここまでトンチンカンな振る舞いを短期間にやってのけた人は少ない。気になった点を列挙してみよう。

 1.就任の記者会見(6月28日)で、松本氏は質疑途中にサングラスをかけた。サングラスは、まぶしさの軽減のためだけでなく、芸能人などが自分の存在を隠すときにも使う。逆に、誠心誠意だれかに語りかけたい人はおそらく身につけない。取材陣のカメラのフラッシュがまぶしかったというのが名目らしいが、この振る舞いは翌朝のワイドショーの格好の話題になった。被災者のことを第一に考えるべき大臣の就任会見といえば、いわば被災者への挨拶の場である。当然、大臣として被災者や国民に届けるべきメッセージがいろいろあるはずだ。なのに、サングラスでテレビ番組のネタにされたのだから、政治家としては不適切な振る舞いをしたと言うほかなかろう。

 2.同会見では、自ら率いる被災者支援チームを自分の名前(松本龍)にちなんで「チーム・ドラゴン」と呼んだ。「チーム青森」、「チーム・マイナス6%」、「チーム・バチスタ」など、チームで呼ばれているものは「チームワーク」が際立っている。仕事で評価される前から、自分のファーストネームを付けることを求めるとは、あまりにも自己アピールがすぎる。

 3.同会見では、「私は民主も自民も公明も嫌いだ」という発言もあった。与野党が協力して進めるべき復興対策の担当大臣が、政党の好き嫌いを公言すること自体、あまりにも政治手腕がなさすぎる。嫌いだと言われた上で、喜んで協力する人がどれだけいると思っているのだろうか。

 4.岩手県訪問(7月3日)のさいには、達増知事に向けてサッカーボールを蹴り込んだ。震災復興キックオフを表し、またボールには応援メッセージが書かれていたというが、突然しかも強く蹴ったためか達増知事は受け取れなかった。重要なメッセージなら、サッカーボールを手渡しすればよい。わざわざメディアの面前で、知事に恥をかかせるようなパフォーマンスをする意味はどこにあったのか。

 5.岩手県知事との会談では、上記の問題発言のほか、「九州の人間だから東北の何市がどこの県か分からない」との発言もあった。これでは、九州の人間を復興担当相に据えてこと自体に問題があったように聞こえてしまう。政治家として言うべき発言だったのか、やはり疑問が残る。

 6.その後の宮城県知事との会談(7月3日)でも尊大な発言が見られた。県がきちんとやらないと「われわれは何もしないぞ」との恫喝もあった。

 7.また、村井知事が少々遅れて入ってきたことをマスメディアの面前でなじる場面もあった。自衛隊出身のくせに長幼の序が分かっていない、といった知事の前職まで持ち出した侮蔑発言もあった。

 8.マスコミの前でこうした発言をしながら、「今の部分はオフレコな。書いた社はこれで終わりだから」といった言論の自由を制約するような発言もあった。オフレコにすべきことを言うつもりなら、マスコミがいないところですればよい。

 9.釈明会見(7月4日)では、「九州の人間」「博多の人間」であることを自らの「語気の荒さ」の理由に挙げた。「B型で短絡的」と血液型まで理由に出した。自分の愚かさを九州出身者やB型の人に添加して説明すること自体、政治家にふさわしくない言動である。そもそも、こうした「特定集団の欠点を指摘する発言」によって差別的意識が生まれかねないことくらい、分からなければ政治家になるべきではない。九州では「九州男児はこういった見苦しい言い訳はしない」といった反論が出たとの報道があったが、当然だろう。

 まとめ:松本氏は、自己アピールが強く、他者に対しては尊大で、聞き手に差別感を生み出しかねない発言をした。しかも、マスメディアの面前においてである。テレビ政治時代の大臣としてはもとより、この時代の政治家としても「資質が低い」と評価せざるをえない。とりあえず、資質が「ふつう」の政治家が後任につくことを祈りたい。