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伊勢志摩サミットについて(ブログより)

祝! 伊勢志摩サミット

 2016年の第42回G7サミットの開催地が三重県の伊勢志摩に決まった。 安倍首相は、伊勢の文化と志摩の自然を理由に挙げた。そのほか、海女の伝統があるので女性の活躍も示せると考えたといった報道もあった。たしかに、海洋国家である日本をアピールするのには、うってつけだと思う。

 候補地の中には、政治的メッセージ性の高い広島や仙台も含まれていたが、結果的には近年のサミットが採用している「リトリート(隠れ家)方式」に落ち着いた。この開催方式は沖縄サミットの成功がきっかけだ。ちょっと振り返ってみよう。

 第1回のサミットがパリ郊外のランブイエの古城で開かれたことからもわかるように、サミットの開催地の選定では「首脳たちが自由に語り合える雰囲気」が当初から重視されていた。首都で行われる一般の首脳会談とはちがう環境が望まれていたのだ。しかし、早くも第3回のサミットから、首都での開催が普通になってしまう。イギリスはロンドンを、日本は東京を、3回連続でサミットの開催地に選んだ。ほかの国も、首都や首都近郊、あるいは第2、第3の都市を開催地に選んだ。第25回まではそんな感じだった。

 選考基準が決定的に変化したのは,2000年の九州・沖縄サミット(第26回)と翌年イタリアで開催されたジェノヴァ・サミット(第27回)によってだ。ちょうど世紀の変わり目に、サミットの開催地に必要な条件が一変する出来事が発生したのだ。

 日本で初めて地方開催となる沖縄サミットで、一番心配されたのは首脳の警備だった。返還後初めてとなるアメリカ大統領の沖縄訪問に向け、基地反対運動が激化することが予想された。しかもこの頃、世界では、先進国の政府間会議はなんであれ、反グローバリズムの運動の標的になっていた。事実、前年の1999年にドイツで開かれたケルン・サミットでは、3万人以上の人が「人間の鎖」をつくって会場を取り囲み、重債務貧困国の債務帳消しを力づくで要求した。 そこで沖縄サミットは、沖縄県名護市の部瀬名岬に、新たな会場「万国津梁館」を建設して開くことになった。岬だから付け根を封じれば警備も容易だ。そこに警察庁は全国から約二万人の警察官を派遣した。海上保安庁も船艇約百隻を投入し、海上を警備した。その結果、沖縄サミットは大きなトラブルもなく、無事に終了した。

 対照的に、翌年のジェノヴァ・サミットは大都市の街中で開かれた。ヨーロッパ各地から過激なNGO(非政府組織)が会場に押し寄せ、その数は20万人を超えた。そして、その一部が警官隊と衝突し、1人の死者と数百人の負傷者が出た。これが反省材料となった。

 さらに、この年の9月、アメリカで同時多発テロが起きた。当初、2002年の議長国カナダは、サミット開催地をケベック市と発表していた。しかし、2001年の悲惨な出来事を見て、急遽、ロッキー山脈にある小さなリゾート地カナナスキスへと開催地を変更した。これ以降、開催地を隔絶された場所とする「リトリート方式」が続いている。リトリート方式はカナナスキス・サミットから、と言われることが多いが、お手本は沖縄サミットだ。

 首脳が話し合いをしやすい環境と警備のしやすさのほかに、交通の便や随行団が宿泊できるホテルの存在も開催地決定では大切だ。

 途上国支援が議題になることから、最近のサミットにはアフリカ諸国などからも首脳が参加する。国連など国際機関の長も参加する。政治リーダーたちの部屋に加え、千人単位の随行員の宿泊先の確保が必要になる。伊勢志摩にはホテルが多い。その点でもプラスの評価が高かったのだろうと思う。

 いずれにしても、来年のサミットの開催地は伊勢志摩に決まった。サミットの取材に訪れる数千人のメディア関係者を通じて、古きよき日本の文化と美しい自然が、ますます世界に知れ渡ることを期待したい。


伊勢志摩サミット 拡大会合

 専門家でないとなかなか気づかないことだと思うが、今年の伊勢志摩サミットの拡大会合は異例である。

 洞爺湖サミットでは、「新興国」との拡大会合、いわゆるG8+5が開催された。その後、リーマンショックを契機にG20が首脳会合を持つようになったため、G8+5は開かれなくなった。一方、「途上国」との拡大会合は、その後もアフリカ諸国の代表が数か国参加するかたちで続いてきた。昨年のドイツ・エルマウでのサミットでも、リベリア,セネガル,エチオピア,ナイジェリア,チュニジアといったアフリカ諸国を代表する首脳たちが招かれた(さらに中東からイラク首脳が参加)。

 今回、日本は思い切った選択をした。8月にTICAD(アフリカ開発会議)を主催する立場であるにもかかわらず、あるいはそれだからか、サミットではアジア重視をはっきりと打ち出したのである。アフリカから招待されたのはAU(アフリカ連合)議長国のチャド大統領だけであった。

 対照的に、アジア太平洋地域からは、ラオス、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、スリランカ、パプアニューギニアの6か国の首脳が拡大会合に参加することになった。このうち、ラオスはASEAN(東南アジア諸国連合)議長国なので名目は立つ。そのほかについては管官房長官からの説明はなかった。

 このうち、パプアニューギニアはPIF(太平洋諸島フォーラム)の代表国の扱いなのだろうと想像がつく。バングラデシュとスリランカは南アジア地域の代表扱いだが、SAARC(南アジア地域協力連合)の議長国はパキスタンなので、日本のインフラ支援の関係から招かれたのかもしれない。理由不明である。

 もっとわからないのは、ベトナムとインドネシアで、特にインドネシアはG20のメンバーだから、G7にわざわざ招くことはない。ベトナム招聘に理由を付けるとすれば、TPPのメンバーであることに加え、中国と南シナ海でもめていることがあげなければならないだろう。

 菅官房長官は、「8年ぶりにアジアで開催されるサミットであることをふまえ、世界の成長センターとして経済成長をけん引するアジアが豊かな繁栄を続けるために何が必要かについて掘り下げて議論したい」と述べた。それなら、中国や韓国も呼ばなければならない。

 なお、拡大会合には、国連、経済協力開発機構、アジア開発銀行、国際通貨基金、世界銀行の5つの国際機関の代表も参加する。サミットの常連の顔ぶれの中に、日本が力を入れるアジア開発銀行が入っている。

 ようするに、日本はアジア太平洋地域における中国の軍事的・経済的な進出を阻むという政治的意図をもって伊勢志摩サミットの拡大会合に臨むのではないか? そう考えると納得がいくのだが・・・。


伊勢志摩サミット 閣僚会合

 伊勢志摩サミット前に行われる8つの閣僚会合がすべて終わった。(首脳会合の後にあと2つあるが・・)。

 さて,みなさんはどこで何が開かれたか,いくつ言えますか?

 地域の活性化を意図して,安部政権はサミット史上もっとも多くの大臣会合を,首脳会合の候補地となったところを中心にばらまいた。たしかに内容についてはいくつか重要な進展があったのかもしれないが,はたして役人レベルでなく大臣レベルでやる必要があったのかは,判然としない。

 ちなみに正解だが,開催地と開会日を入れたリストは以下のようになる。

  外務大臣会合(広島市4/10)

  農業大臣会合(新潟市4/23)

  情報通信会合(高松市4/29)

  エネルギー大臣会合(北九州市5/1)

  教育大臣会合(倉敷市5/14)

  科学技術大臣会合(つくば市5/15)

  環境大臣会合(富山市5/15)

  財務大臣・中央銀行総裁会議(仙台市5/20)

  そして今後開催されるのは,以下の2つとなる。

  保健大臣会合(神戸市9/11)

  交通大臣会合(軽井沢町9/24)

 すべての会合で「宣言」のような公式文書が出されている。

 伊勢志摩については開催地の経済効果についてマスコミから問われることもあったが,閣僚会合についてはそうした質問がいっさいなかった。たしかに,そのほうが健全なリアクションなのだと思った。


伊勢志摩サミット 外相会合

 4月10日と11日に広島で開かれたG7外相会合は、「Hiroshima」を世界に再認識させたという一点だけとっても、大成功だったと言える。

 欧州におけるテロ事件の記憶が新しいだけに、テロの脅威は、日常的に、そして身近に感じられる。それだけに、世界の人びとの関心はテロ対策に向かいがちだ。だが、核兵器の存在は、規模において比較にならないほどの脅威のはずだ。しかも、もしそれを独裁者が手にした場合、その脅威は計り知れない。その点に改めて気づくきっかけに、G7広島外相会合はなった。それだけでも成功と言えるだろう。

 昨年のNPT運用検討会議で最終文書が不採択になったことに象徴されるように、「核兵器のない世界」に向けた動きは停滞している。今回、G7外相は広島で原爆ドームと平和記念資料館を訪ね、原爆死没者慰霊碑に献花した。そして、政策協調の詳細を定めた「不拡散及び軍縮に関するG7声明」に加え、政治的感慨を含めたメッセージである「核軍縮及び不拡散に関するG7外相広島宣言」を発した。世界のメディアがこれらを取り上げ、核軍縮への取り組みが加速するなら、じつに望ましいことではないか。

 もちろん、この宣言だけで北朝鮮が核開発を止めるわけはない。また、「非人道的」との文言の扱いをめぐり、核保有国の都合が垣間見えたのも事実だろう。被爆者たちにはいろいろと不満が残ったかもしれない。それでも、「テロの脅威」だけでなく「核の脅威」に目を向けさせた意義は、もっと高く評価されてよい。


伊勢志摩サミット 地道な活動

  来週に伊勢志摩サミットを控えて,少しずつ宣言に盛り込む話が表に出てくるようになった。新聞報道によると,感染症の危機対応について新たな枠組みに合意するようだ。

 世界保健機関(WHO)を中心に,複数の国連機関を連携させてエボラ出血熱のような感染症危機にすぐに対応できる体制を整えるのだ。2014年に西アフリカで発生したエボラ出血熱への対応に遅れがあった,との反省を踏まえてのことらしい。もちろん,そうした制度設計をする以上,必要な資金はG7が手当する。

 もちろん,WHOなどは国連機関なので,G7としては「創設を働きかける」ことしかできない。しかし,こうしたことこそG7の重要な役割なのだと私は思う。サミットは「グローバル・ガバナンスの司令塔」なのだ。

 サミットはけっして自分たちの国のことだけを考えているわけではない。伊勢志摩サミットにも途上国の代表が来る。途上国支援の具体策も示される。こういう地道な努力がG7のリーダーシップのもとで進められていることは,もっと知られてもよいのではないか。


伊勢志摩サミットを評価する その1 日程

 伊勢志摩サミットが終わった。一言で印象を言えば、安倍首相の思い入れや思惑が色濃くにじみ出た、サミットになった。

 まず日程を振り返ろう。

 伊勢神宮を訪問することは、日本の自然や文化を知る上で極めて重要である。この点は間違いない。しかし、各国の首脳に賢島と伊勢神宮の往復を求めたことは適切だったのか。多くの首脳はそもそも中部国際空港から賢島までの約200キロを車で移動し、さらにその後、賢島と伊勢神宮を往復した。1泊2日という強行スケジュールを考えれば、首脳たちは疲労困憊したことだろう。この行事に往復を入れておよそ3時間つかった。過去に写真撮影を中心としたイベントのために、これだけ首脳を移動させたサミットはない。その後、賢島に戻って現下のグローバルな課題について議論したのである。安倍首相の思い入れはわかるが、メルケル独首相が不快そうに歩く姿を見て、遠路はるばる来日する他国の首脳の希望に沿った「おもてなし」でもよかったように思った。ちなみに、このイベントのためにランチは13時50分にスタート。終わったのは15時37分になった。

 一回目の会議と二回目の会議との間、各国首脳はわざわざ外に出て「自動走行車・燃料電池自動車のプレゼンテーション」に付き合わされた。言うまでもなく、日本の技術の宣伝のためである。ここでもまた、議論以外の時間が取られた。そのあとは、英虞湾の多島海をバックに、またも記念撮影である。

 議論よりイベント優先になった感じがしているのは私だけなのだろうか?

 たしかに、マスメディアもサミットをイベント風にとらえて報道してきた。それに合わせる必要もあって、広告代理店の仕切りに乗るハメになったんだろうか?


伊勢志摩サミットを評価する その2 経済

 伊勢志摩サミットの1番の議題は「世界経済」だと安倍首相は述べていた。理屈はわかる。たしかに新興国経済の低迷は気になるところだ。だが、だからといって、G7各国にいっせいに財政出動することを求めるのは、さすがに無理がある。先日の日独首脳会議でもG7の財務大臣会合でも、これに反対する国があることは明らかだった。にもかかわらず、安倍首相は「危機」を強調し、財政出動が必要な時期に消費増税はできない、という方向に議論をもっていこうとした。内政上の政治的思惑が優先されたのである。

 そこで、2つのことが行われた。

 宣言文で、まず「財政出動」は「財政戦略」という言葉に換えられた。「出動」にはこだわらない、「財政再建」にも配慮する、といった姿勢の表れなのだろう。とはいえ、宣言文には「財政再建」という言葉は登場しない。「債務を持続可能な道筋に乗せていくための取り組みを継続しつつ」とか「債務残高対GDP比を持続可能な道筋に乗せる事を確保しつつ」といった表現だった。言うまでなく、「しつつ」のあとには「機動的な財政戦略」という言い方で、財政出動を実施してよい、という話が来る。

 財政出動に反対の国があったため、国によって金融政策、構造改革、財政戦略のどれをとって良いということになった。ようするに、世界経済が冷え込まないようにするためへのG7の合意は、「各国それぞれ、できることをやろう」というレベルの政策協調になったということだ。

 「なんでもやろう」という協調では格好が悪いので、宣言文にはまたぞろ「三本の矢」の比喩を入れた。得意のキャッチフレーズでごまかした様相だが、安倍首相自身は、会見でも「アベノミクスを世界で展開してまいります」と述べ、勝ち誇った様子だった。

 首脳会合の議論では、財政出動に賛成する複数の国から、国内の経済格差の縮小=中間層への手当てへの言及があったらしい。宣言文にはないが、ブリーフィングで出たためにJapan Times などはこれを一面で取り上げた。私はこれを「財政出動の正当化には有効」と見て、テレビ番組でも解説したのだが、ふたをあけてみたら宣言文に言及はなく、ちょっとガッカリした。

 皮肉を言えば、「言葉の言い換え」と「キャッチフレーズの利用」に加え、「国内の格差縮小」を入れておけば、財政出動を正当化する姑息な「三本の矢」が完成したではないか。

 いずれにしても、これで安倍首相は消費増税の延期は「お墨付き」を得たことになる。これだけ内政の都合にふりまわされたG7サミットはまれと言ってよい。


伊勢志摩サミットを評価する その3 拡大会合

 拡大会合については先にも述べた。これも賢島で行われたが、報道はほとんどなかった。わたしは国際メディアセンターにいて、どんな議論がなされたのか、興味津々だったのだが、結局、政府発表は出てこなかった。後でHPで議論があったことは確認できたが、現地でもその程度の扱いだった。

 写真はすぐ出てきた。21人が一列に並んだ記念写真だ。いつものG7の7人とEUの2人、そしてアフリカの1人とアジア太平洋の6人、そして国際機関5人の21人である。

 オバマ広島訪問があったために、名古屋から賢島に行った途上国の首脳たちは、翌日に名古屋(一部は東京)で開かれる2国間の首脳会談のために、名古屋に戻って待機した。街に出て首脳がいたかどうかは定かでない。マスコミもぜんぜん注目しなかったのだから、望めば、きっと普通に名古屋の街を気ままに散策できたことだろう。

 繰り返すが、サミットの日程には先進国と途上国との対話が設けられている。そのために、途上国から7人の首脳たちがやってくる。かれらは、安倍首相が自己都合を優先させても、日本のマスコミが無視しても、ガマンして日本に居てくれた。ありがたいかぎりである。

 余談ながら、国際メディアセンターには、インドネシアやバングラデシュの記者たちもやって来た。食堂に、ちゃんとハラールの料理が用意されていたかどうかは確認できなかった。


伊勢志摩サミットを評価する その4 点数

 伊勢志摩サミットについて、トロント大学のカートン先生との対談をした。中日新聞と東京新聞に出ている(5月29日朝刊)。

 カートンさんの評価は厳しかった。安倍首相が強引に財政出動を主張したこと。そして、具体的な数値を示しての貢献策が少なかったことが彼の不満の源のようだ。

 カートン先生の評価は

  <全体>C+

  <安全保障と外交>A

  <女性の活躍推進>B+

  <保健衛生>B-

  <開発援助>C

  <インフラ投資>C

  <経済と貿易>C-

  <気候変動とエネルギー> F

 であった。とくに気候変動については、COP21で決めたことをなぜさっさと実施しないのか! と怒っていた。

 わたしの評価も以下に示そう。

  <全体>B (世界経済で内政・選挙を意識しすぎた点が大きなマイナス)

  <安全保障と外交>A (オバマ広島訪問も含め)

  <女性の活躍推進>A (リケジョへの国際的支援枠組みを決定)

  <保健衛生>A (WHOの機構改革を決定、危機対応強化)

  <開発援助>B (SDGsの履行に言及、日本はTICADも実施)

  <インフラ投資>B (伊勢志摩原則はつくったが...)

  <経済と貿易>Bー (「三本の矢」なんて、方向性を示せなかったのと一緒)

  <気候変動とエネルギー> B (今年の焦点はここではない。3Rを世界へは評価)

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